近年、国内外で多くのヒト由来試料・情報を用いた医学研究が行われていますが、同時にそこにはさまざまな倫理的・法的・社会的課題(ELSI)があり、世界中で活発な議論が行われています。本ユニットでは、特に以下のテーマに注目し、活動しています。
ヒト由来試料・情報の取り扱いに対しては、関連する法令、そしてヒトゲノム指針、医学系研究指針、ヒト幹細胞研究指針、ヒトES細胞研究指針、特定胚指針などさまざまな指針が規制しています。こうした法令・指針の改定など、最新の動向について情報収集に努め、議論を深めるためのさまざまな発信を行っていきます。さらに、ゲノム解析技術がめざましい発展を続ける今日、いったん同意を得て収集したヒト由来組織について、当初想定していた目的を超えた利用する場合の取り扱いなど、新たな課題は日々生まれています。本ユニットでは、こうしたヒト由来試料・情報の倫理をめぐる最新の議論を取り上げ、さまざまな課題を俯瞰的にとらえながら、検討していくことを目指しています。
個人情報保護の第一の目的はプライバシーや個人の権利利益の保護、第二の目的は情報の利活用です。2017年5月に個人情報保護法が改正され、ヒトのゲノム情報や臨床情報の保護と利用に関する考え方が大きく変化しつつあります。また海外でも2013年ごろから同様の変化が起きており、国際的な情報流通の状勢に影響が及ぶことも予想されます。本プロジェクトでは、ヒトゲノム情報や臨床情報を用いる研究者や、機関の倫理審査関係者、試料・情報の提供者となる可能性のある一般市民や患者などに向けて、関連する情報の提供を行います。
ヒトゲノム解析研究の進展に伴い、特に近年、ゲノム医学は急速に進展し続けており、ゲノム情報を診断や治療に活用するゲノム医療の社会実装が進むことへの期待もより一層高まっています。本ユニットでは、国内外のゲノム医学・医療プロジェクトや、倫理に関するポリシー、議論すべき論点など、最新の動向を紹介していきます。
2015年春以降、ヒト生殖細胞系列に対するゲノム編集をめぐり世界的に大きな議論が起こっており、さまざまな立場から検討がなされています。日本では、内閣府生命倫理専門調査会がヒト受精卵に対するゲノム編集研究を容認するという姿勢を示しました。本ユニットでは、ヒト生殖細胞系列を中心に、ヒトに対するゲノム編集に関するさまざまな見解を一望できるような見取り図を描き、議論の一層の深化に資することを目指しています。
本ユニットの上記の研究・活動に関する資料や、関連する省庁審議会の資料などへのリンクページを掲載しています。